昭和の風林史(昭和五十年三月三日掲載分)

今年もつづく 世界的気象異変

天災期限月の八月限が登場して小豆相場は天候相場の前夜祭気分である。人気も集中せん。

「上水を流るるものに春の情 越央子」

本年は太陽の黒点数が極小年に当たるため地球上の各地は昨年に続いて異常な気象現象を見せそうだ。

特に寒冷化が進んでいる北極の寒気は①グリーンランド②シベリア北部③カナダ北部の三方向に張り出し、いわゆる〝三波数型〟の気象異変型を示している。

このため、ヨーロッパ、ロシア、西シベリア、中国、日本、カナダ、アメリカなどの中緯度地帯では、暖冬、冷夏、大雪、干ばつなどの気象異常が発生しやすい。

北半球の高緯度地方の寒冷化に伴って赤道前線は南に押し下げられ、低緯度地帯では降雨域が移動して印度中部やアフリカ北部で干ばつ。バングラデシュでは洪水が定常化している。

このため南半球では二、三月にかけ南部地方で大雨が降りやすく、砂漠が緑化している。

ところで〝三波数型〟の寒気の張り出しは昭和29年、38年、39年などの夏および冬に現れて、日本では冷害や豪雪、アメリカでは長雨、干ばつ、ヨーロッパでは冷夏が続いた。

今年の冬は昭和38年型の北陸を中心とした豪雪があり、すでに異常である。

それではアメリカ、ヨーロッパ、中国などの本年の天気を予想するとアメリカではカナダ北部の寒気の影響を受けやすく、五大湖を中心として中西部、北部から東部大西洋にかけ低温と不順な天候が続き南部地方は昨年に続いて干ばつの傾向が強い。

ヨーロッパ、ロシアは春先から夏にかけて低温現象が現われ不順であろう。

中国は、東北部では低気圧の発生が多く寒暖の変動が激しく華北を中心に南西部地方では水不足が目立ち大干ばつの気配がある。

いずれにしても今年の気象異変は注目されるところで、穀物相場に関心を持つ人々は、三年連続の小豆豊作という奇蹟もピリオドを打って北海道の冷害・凶作は、その可能性が非常に高いことを投機思惑の基盤に据えている。

また昨年まで小豆の大場所であった中間機関が今年から連作の関係もあって大幅減反になり、作付け四万ヘクタール台という見方は、ほぼ間違いのないところのようだ。

●編集部注
 太陽黒点と経済の関連性の歴史は結構古い。

 19世紀後半に活躍した英国の経済学者、ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズが「太陽黒点説」を唱えている。

 近年では三菱UFJモルガン・スタンレー証券の嶋中雄二氏が有名だ。

【昭和五十年三月一日・休場】