昭和の風林史(昭和五十年三月一日掲載分)

足は軽ろやか 春山笑うが如し

春暖の候。重い腰の小豆相場が新たに注目されてくる。先二本完全なる天災期限月。足は軽い。

「かなしき事のつづくに草が萌えそめし 山頭火」

陽春三月。暖地では花が咲く。梅から桃にかわる。人の気持ちも、なごんでくる。

詩人は春山淡治にして笑うが如く―と遠望した山も笑っているように見える。夏山は蒼翠にして滴るが如く、秋山は明浄にして粧うが如く、冬山は惨淡として眠るが如しという。

小豆相場のほうも冬菜や眠るが如しから、春山笑うが如しに移り変わろうとしていることが判る。

小豆は、三月、四月需要最盛期だ。進入学、春の彼岸、花見行楽、その間に結婚式の祝儀もある。

現物の荷動きが、にわかに活動してくる。

末端の現物筋は、軟調地合いの相場を眺め、手当てが遅れている。

あわてて買う事はない、もう少し待て、もう少し待てで庭がすいている。

相場が締まってくるとそういう様子眺めだった現物問屋も、需要かも手当てを急ぎだす。

現物価格が締まり定期の期近限月が強張ってくると価格変動に敏感な先限が人気化してくる。

定期先限は、現物事情よりも思惑人気で動くものである。

すでに作付け面積の大幅減反と、三年続きの豊作のあとの危険な年回りであること。そして世界的な異常気象が今年も続いている。

これで、取り組みが太ってくれば、水準が低いところの取り組みだけに面白い動きが期待できるのである。

そして相場で最も重視される日柄。この日柄が昨年の九月28日底入れして二月28日で五カ月を過ぎた。

この間、先限引き継ぎ線は一万七千円中心の動きである。横に横にと這ってきた相場だ。
日柄充分―といえよう。

一方、投機を刺激する景気のほうも、かなり回復している。金融もゆるみ過剰流動性資金の流れも速度がついてきた感じがする。

春遠からじ―から春来たる段階だ。

三月も二月と同じく三日新ポ。そして八月限登場だ。七・八の先二本は生(き)一本の天災期限月。重かった三月限も底を確認した。

●編集部注
さて、三月である。

この年の三月は後々のエポックメーキングとなる事象が幾つか起こった。

先ず、新大阪から博多までを結ぶ山陽新幹線が三月に全線開業している。

ペヤングソースやきそばも三月に発売している。

【昭和五十年二月二八日小豆七月限大阪一万七〇七〇円・一〇円高/東京一万七〇九〇円・六〇円安】