昭和の風林史(昭和五八年十月五日掲載分)

2019年10月24日

見える見えんは時の運か

相場は情報では儲からん。相場は相場に聞くだけであるが聞ける、聞けんは時の運。

相場の世界で特に取引員第一線営業現場は、あそこが買った、ここが売ったと節々の手口に、ことのほか神経をくばるし、その手口の身元も相場がまだ立会しているうちにほとんど知れわたってしまう。

そしてこれが当たらずといえど遠からず、正確とはいえないまでも輪郭を?んでいるから、この世界の情報は怖いのである。

昔ある相場師が小豆の買い占めで苦戦している時に苦肉の策で二、三の要点に、ちょっとした情報を絶対極秘だよ―と流したところ30分もしないうちにとんでもない遠いところから尾ひれがついて逆流してきたらしい。

そしてその情報にその相場師が乗ってしまった。

あとから判ったのは、なんの事ない自分が極秘だよと流した材料が業界くまなく行きわたって自分のところに戻ってきた。

相場は一場二場ぐらいは靡いたように見えてもすぐ正体を暴露して、修正してしまう。

ここらあたりが相場は神聖にして犯すべからざるところであろうか。

さて、ことほど相場情報は速いけれど、その情報で相場が判るかといえば早耳の早倒れなどといって決して手口分析などの現場情報で相場は儲からん。

第一線営業現場は、その第一の目的はお客さんが売る気になったり、買う気になったり、商いに弾みがつくことを願う。

もとよりお客さんに儲けてもらおうと思わぬセールスは一人もいない。皆が皆お客さんに儲けてもらいたい。だから一生懸命材料を流し強弱を流す。

引かされ打たれた人にはそれなりのなぐさめになる材料を。

しかし、現実は、あすの相場は誰にも判らない。判らないが見える時と見えん時があるというだけ。

●編集部註
 言葉は生き物である。当節、日常的に使われている言葉の出自が、意外に若い時がある。
 例えば「目が点になる」は、さだまさしが歌詞に用いたの最初とされる。「バツイチ」「ヘコむ」等も意外に最近の言葉だ。
 心を折る、心が折れるという言葉も、知る人ぞ知る〝ミスター女子プロレス〟神取忍のインタビューが発祥とされる。
 何故こんな事を書いたかというと、ここまでの国内商品先物市場の歴史は「お客さんに儲けてもらおう」と務めたセールス達の心が幾数多折られた歴史でもあるからだ。
 相場を知らぬ口だけ達者な売り上げ至上主義の上司、やたらに書類を書かせる主務省等々、ネタは枚挙にいとまがない。