昭和の風林史(昭和五八年七月三十日掲載分)

2019年08月21日

十勝平野に未だ花咲かず

満を持すべし。八月上旬、沖天を焦がさんばかりの踏み上げありの小豆相場だ。

大衆の人気は輸入大豆に走った。

シカゴの相場金言に〔大きな商いの商品を狙え〕というのがある。

確かに薄商いの商品では値動きも小刻みで、損しても取り戻すのに難儀するが今の大豆のように大きな手口、大きな値動きだと、煎れ投げドテン、なんでもできるし、まずは相場が若いことと、シカゴは八月に燃えるという楽しみがある。

いずれこの輸大は六千円台の踊り場に出て七千円に挑戦しそうだ。

小豆のほうは孫子兵法でいう支刑の地である。

我れ出でて利あらず、彼(敵)出でて利あらずを支という。支形は敵、我れを利するといえど出ずる勿れ。

また「近くして静かなるはその険をたのめばなり。遠くして戦を挑む者は人の進むを欲すればなり」。

小豆売り方も安値を叩くようなことをしない。

買い方も煽るようなことをしない。

戦いには潮時というものがある。戦機、待機、勝機。機は気でもある。人気、熱気、病気、元気、嫌気、惰気、欲気―。

戦機未だ熟さず。

今のところ八月第一週になにかキッカケが訪れそうに思う。この時、拍車をかけ馬体に鞭を入れんか。激水の疾き石を漂よわすに至るものは勢いなり。善く戦う者、これを勢いに求めて人に責(もと)めず。

この相場の最後は売り方がつくる。沖天を焦がさんばかりの煎れ上げである。予備枠もよし。巨大次期枠早期発券もよし。弾(たま)もタンクも銃剣も―というところだ。

そうなって始めて作柄(凶作)と相場が分離する。帯広平野に花咲かずで愕然としたときが相場の満開と思えばよい。

買い玉満を持すべし。小競りあいに一喜一憂することなかれ。

●編集部註
 筆致、文体の凄み―。さながら、泗川の戦い直前、淡々粛々と配下に戦略を提示。担うべき役割を指示する島津義弘の如き冷静さである。相場師の戦略解説は、戦国武将のそれと似ているのかも。
 諸般の事情で絶版にな ってしまったが、アマゾンではまだ安価で入手出来るので、池宮彰一郎の小説「島津奔る」を是非読んで戴きたい。映画「300」には負けるが、5 万対5千の闘いで5千がエゲツない勝ち方をする。
 戦いには匂いがある―と 「島津奔る」にある。
 物語のクライマックスは関ケ原の闘い。ここで島津軍は世紀の大撤退戦を行う。隆慶一郎の「一夢庵風流記」もそうだが、兎角負け戦描写が面白い作品にハズレはない。