昭和の風林史(昭和五九年三月六日掲載分)

2020年03月31日

なにに焦点を絞るべきか

なにに焦点を絞るべきか。お客のセールスも狙いがつけにくい段階。つい様子を見る。

投機家も取引員営業第一線も焦点定まらず、とまどっている。次々打ち出される新種取り引き(貴金属市場)や東穀の中国産、米国産別々の市場とセット売買方式など。

専売公社が横文字の新しいタバコを次々発売しているが、喫煙者の数は今みたいに禁煙運動が盛んでない時でもふえず、人それぞれ嗜好があって、はじめ物珍しさで買ってはみるが、新しいタバコ必らずしも売り上げが伸びない。

そこへ外圧で外国のタバコも店頭に並べられ、タバコ屋のおばさんは売り場面積の問題もあり混乱する。

ゴムの九限月の立ち会いは長びくし、中豆、米豆の立ち会いも長びき市場係は疲労する。セールスも相場の焦点を絞りかね、当然お客さんに目移りして、つい迷ってしまう。

いまは、そのような段階で、いずれ北海道小豆も限月延長となれば、電話料金の嵩む割りに経営効率がいま一ツとなりそう。

こうなると取引所の格差、取引員の格差の上に中央とローカルの格差がかぶさってくる。

世の中、ますます厳しくなって、投機家にしてもセールスにしてもよほど勉強し、自分というものを持っていないとついていけなくなる。

社会構造が複雑化し、情報伝達がスピード化し、物の流れが変化する以上、先物市場の構造も当然革命されなければならない。

その意味では、時代に遅れていた商取業界が音を立てて変化しだしたことはご同慶である。

ただ、それに見合うだけの投機資金を呼び込める段階までに時間を要するし、新種取引を理解する顧客を開拓できるセールスの教育に時間がかかる。

取引員経営者にとっても採算性最優先だから、新時代に馴れるまで大変だ。

●編集部註
 専売公社とはまた、懐かしい響きである。
 タバコと塩は、その昔お上の専売制であった。調べると、明治三十七年に起こった日露戦争の戦費を調達するために民間事業を買い上げたという。
 町のタバコ屋さんもまた戦争と関係がある。第二次大戦後、全国の戦争未亡人や、身寄りをなくした年配者の生活を救済するべく、国は優先的に小売り免許を許可。故に、今回の文章のように「タバコ屋」と「おばさん」はセットで語られる。
 これと同じような業種が町の駄菓子屋や広島市内のお好み焼き屋さんである。どちらもその昔は大概おばさんが店を切り盛りしていた。関東では、駄菓子屋の中にもんじゃ焼き用の鉄板があったそうだ。同じような店を、広島でも見た事がある。