昭和の風林史(昭和五七年六月二八日掲載分)

2018年07月12日

見ざる聞かざる言わざる

売り方は反省し、スタンスを変え、持久戦に耐える陣形に整備すべきである。

山川草木うたた荒涼という情景で人語らず。六月納会大受け渡しあとの疲労感が出ていた。誰もが『疲れました』と。

相場から降りる人は別として、長期戦の態勢に陣形を整備するため前二本限月の売りを手仕舞う。

これは一筋縄ではいかんと誰もが肝に銘じた。行政とか取引所サイドの規制などを期待したのが間違っていたという反省もある。

取引所は納会のあとでも『異常、異常言うが、一体どこが異常なんだ? 騒ぐほうの頭が、異常じゃないの?』というとらえかただった。多分にポーズもあろうが、まあ、そんなふうな受けとめかたであるということを認識しておくのもよいだろう。

値段としては、それほど動いていない。

要するに玄人の〝へそくり金〟をジグザグ相場の安値売り、高値踏みで減らしてしまった。

先限引け足線の二カ月足らずの値動きは結構一万一千円幅になる。

疲れ果てるのも当然か。

さて、小豆から、おさらばする人は別として、これからが本当の勝負どころだ。受けるだけ受けさせ、買うだけ買わせて、いいじゃないか、やるだけやらせれば、いつかは決着がつく。

相場の奥義は「見ざる、聞かざる、言わざる」。

いままでとは違ったスタンスで取り組む。

あとは天候・作柄である。

馬術の名人は鞍上人なく鞍下馬なし。六本木も桑名も意識せず、相場だけを見ていく。

シカゴの格言に「相場が気になる時は、ゆっくり眠れるところまで建玉を減らせ」―とある。

結局は、相場というもの常識に戻る。常識とは日柄と需要供給だ。

週間足は逆張り型。産地作柄良好。信ずる者は強し。くよくよしない。

●編集部註
 穀物相場は限月の移行が一つの節目に。つまり、この頃の時間帯である。
 結論から先に言うと、相場はここから半月かけて崩落する。当時のベストセラーのタイトルに準えて「積木くずし」の状態とでも呼ぼうか。
 この本の著者である穂積隆信の本業は俳優で、筆者が子供の頃見ていたTVドラマでは、主人公を邪魔する嫌味な敵役となると大概この人が演じていた気がする。時代劇なら悪徳商人で、大概最後に成敗される役だった。
 この本は翌83年にTVドラマ化され、これも大ヒット。更に映画化もされるが、著者である穂積やその家族、TVドラマで主役を演じた女優はその後に発覚したスキャンダルで波乱万丈の人生を送る事になる。